【本当にあった結婚式裏話】ちょっと待て、ブートニアが届かない!
あれは桜の蕾が膨らみ出した頃。
やわらかい日差しに包まれた春のある日。
忘れもしない、私がウェディングプランナーとして初めて担当したお客様の結婚式、当日。
新郎様のブートニアが届かない・・・!!∑(゚ω゚ノ)ノ
当時、私が働いていたホテルでは、ブーケや会場装花を地元のお花屋さんへ発注する形をとっていました。
新郎新婦様とお花に関連することを決めるお打ち合わせには、そのお花屋さんも同席。
季節や衣装、会場、新郎新婦の好みに合わせて、ブーケや会場装花をより具体的に提案していただけるようにしていました。
いつもお世話になっているお花屋さんは、年配のご夫婦が営まれている、非常にアットホームなお店。
忙しい時期には娘さんご夫婦もお手伝いに加わり、それはそれは見事なチームワークで仕事をこなしてくださる安心と信頼のエキスパート。
定刻通りにご来館くださった新郎新婦様を笑顔でお迎えし、控え室へ案内して、ベテランの介添えスタッフを紹介して。
うんうんイイ感じ。
そろそろお花が届くころかなー? 先にチャペルの空調チェックしておこう~!
と、私自身も担当としては初めての結婚式にドキドキしながら、細かいチェックにバタバタとしていた時。
社用のピッチ(当時まだインカムが導入されていなかった)が着信を知らせて震えました。
介添えスタッフからです。
「acoroさん、ブーケは来てるけど、どこを探してもブートニアが見当たらなくって・・・」
え、なんて?
とりあえずフリーズ。
たぶん5秒くらい時差があったと思う。
「工工工エエェェ(゚Д゚)ェェエエ工工工」
なにそれなにそれなにそれ!?
今までそんなん聞いたことないんですけどおおおおおおお!!!?
ブーケとブートニアはセットでしょおおおおおお!!!!??
一通り一人でテンパってから、
ハプニングを呼び寄せやすい自分の体質を呪う・・・(ΦДΦ)
急いでお花屋さんに電話をするも繋がらない。
別のスタッフにも手伝ってもらって、ブーケがいつも納品される場所である披露宴会場のバックヤードをくまなく探してみるも見当たらない。
その足で披露宴会場の装花が滞りなく納品されているかをチェックして、
粋な場所にブートニアが置かれていなかったかとか、お花屋さんがブーケに関する謎かけを言っていなかったかとか、
会場装花の納品に立ち会ったキャプテンに確認するも、まったく手がかりなし。
新郎新婦がお支度を完了する時間が刻一刻と迫ってきます。
お花屋さんとの連絡はまだとれません。
控え室の前には青い顔をしたベテランの介添えスタッフ。
これはもう、やるしかない(;゚Д゚)
ウェディング課の事務所にメロスよろしく走る私。
「ブーケから臨時ブートニア作ります!」
上司に宣言すると、上司ももはややむをえないという表情で、渋々うなずく。
ウェディングフェアなどの際に使うリボンやテープ。
材料と道具を抱えて、いざ新郎新婦の控え室へ。いえ、正確には、控え室の前へ!
ブーケから何本か花を引き抜いてブートニアを作る提案をすると、ベテランの介添えスタッフはさらに真っ青に。
「いいの? いいの? 本当に大丈夫なの?」
と、まわりをキョロキョロ確認しながら小声で心配してくれます。
私だって不安しかないよ!。゚(゚´ω`゚)゚。ピー
でもーー。
「こうするしか・・・! お花屋さんと連絡がつかないので。もう間に合いません!」
幸いにもブーケは豪奢なキャスケード型。
ほどよく数本抜くくらいなら、なんとか全体のバランスは保てそう。
慣れない手つきで花を摘む私を見かねて、介添えスタッフも臨時ブートニア作りに荷担してくれました。
「acoroさんの度胸がすごいわ・・・」
褒め言葉だと、今でも思うようにしていますけども。
おかげで私が一人でつくるよりも、思った以上に見栄えの良いブートニアが完成。
本来であれば、新郎新婦のお支度が完了し次第、館内やガーデンで写真撮影をして、
その後チャペルで挙式のリハーサル、そして本番という流れです。
けれどもアルバムに残る写真には、きちんとしたブートニアが納まっていてほしい・・・!
急遽、順番を変えることにしました。
少しでも時間を稼ぐんだ!
挙式担当の牧師さんや聖歌隊の皆さん、写真撮影のスタッフ、それからヘアメイクさんへ事情を説明にまわります。
メロスなacoro再び。もうヒールなんて脱ぎ捨てたかったけど、さすがにそれはビジュアル的に駄目すぎる。
なんでインカムないねん! どんだけ走らなアカンねん!! ε=ε=ε=┌(;´゚ェ゚)┘
すっかり身支度を整えられて晴れやかな新郎新婦様には「撮影の兼ね合いで」とだけお伝えして
先に挙式リハーサルをすませることにご了承いただきました。
なんだか騙しているようでつらい。禿げそう。洗いざらい全部吐いてしまいたい。ああ禿げそう。
でも「ブートニアが届いていないんです」なんて言われても「じゃあ早く届けさせてよ」ってなるだけで、
招待客がいる以上、他のお客様もいる以上、進行を大幅に遅らせることはできない。
だとしたら、最高の一日であるはずの幕開けの段階で、嫌な気持ちにさせることは、きっと正解じゃない。
やれるだけのことをやる。
後でお叱りを受けるのだとしてもーー。
とりあえず、はよ来いやブートニアーーーー!!!!!(*`З´*)
私の心の叫びもむなしく、走り回って時間を稼いだ甲斐もなく。
挙式リハーサルが終わっても、お花屋さんとの連絡はとれませんでした。
ブーケとブートニアの意味からすれば、新郎様の胸元で揺れてるなう!なブートニアは、臨時でも何でもなく、至極まっとうなブートニアといえるのだけれども。
他のスタッフたちからも遜色ないってお墨付きをいただいたけれども。
私も、共犯の介添えスタッフも、当然腑に落ちるはずもなく、苦笑い。
結局、お花屋さんと連絡がとれたのは挙式が始まってすぐのタイミングでした。
他の式場へも納品があって、連絡が遅くなってしまったと。
大至急で作って持っていきますと。
お花屋さんからの電話に対応した上司から、そうピッチへの連絡を受けてふと思う。
あれだけはよ来いと思っていたブートニア・・・
今更どうやってチェンジする?Σ(゚д゚;)
ちょっと元気がなくなっているので交換しましょう、とか・・・?
そんなことを考えていると、予想のななめ上をいく事態がまたもや発生!!
私が披露宴会場でバンケットスタッフと最終ミーティングを行っていた最中。
挙式後、新婦様のヘアチェンジのために一旦おふたりが控え室へ戻られたタイミングで。
そこになんとお花屋さんが直々に飛び込んだーー! 飛んで火に入るお花屋さん・・・
お花屋さんは「遅くなって申し訳なかった」「ちょっと豪華に作ってきた」といったことを新郎新婦様に言ってしまったらしく。
このとき介添えスタッフは卒倒しそうになった、と後から教えてくれましたが。そりゃそうだ・・・(ll゚д゚ll)
おふたりはもちろん何のこと? という感じだったものの、話の流れ的に
披露宴用のちょっと豪華なブートニアをお花屋さんがわざわざ持って来てくれた、となったようで、
当日は会えないと思っていたお花屋さんにも会えて大変喜んでおられた、と。
その後ウェディング課の事務所に向かったお花屋さんは、上司からこってりと絞られました。
(ホテルのスタッフを介さずに、いきなり新郎新婦の控え室に飛び込んだことも含めて)
せっかくまあるく納まっているので、あえて不快な思いをさせる必要もないだろうと、
結局お客様へはお伝えせぬまま。
このことは墓場まで持ってい・・・けてないな、ここで書いてるもんな(;^ω^)
これがもしブートニアではなく、ブーケだったら・・・?
さすがにありえないけれど、考えただけで背筋が凍ります。
何度も何度も発注の確認をして、最終確認のメール、ファックスのやりとりもして、確認に確認を重ねても、
それでもまだこういうことが起こりうる世界。
この事件で幸いだったことは、新郎新婦様のお色直しがなかったこと。
新郎様がお酒にめっぽう強く、結婚式おひらき後の写真撮影もまったく問題なく出来たこと。
なにより、途中でブートニアをチェンジしたことを、新郎新婦様がプラスに受け取ってくださったこと。
その後、何件も結婚式を担当させていただくことになるわけですが、正直いって、
何もハプニングがなかった結婚式ってないです。
「結婚式には魔物が棲む」
私がウェディングプランナー時代のことを話すなら、タイトルはこれ以外にない。
そのくらい、いろーんなことが、あったなぁ・・・(。・д・。)
尽きぬネタはまたの機会に。